時を刻む技術とデザインの粋を極め、世界を魅了するオーデマ・ピゲ。
その代表作「ロイヤルオーク」は、時計業界において新たなトレンドを創出しました。
本記事では、オーデマ・ピゲがどのようにしてその地位を築いたのかについて詳しく説明します。
オーデマ・ピゲの歴史、革新、そして美学に焦点を当てて、その影響力を詳細にお伝えします。
目次
オーデマ・ピゲの魅力と歴史
オーデマ・ピゲは、パテックフィリップやヴァシュロン・コンスタンタンと並ぶ、世界のトップクラスの腕時計ブランドの一つです。
このブランドは1875年、ジュール・ルイ・オーデマとエドワール・オーギュスト・ピゲの二人の創設者によりスイスで設立されました。
創業以来、技術的な革新や独創的なデザインで知られています。
特に1892年には、世界で初めてミニッツリピーター機能を備えた腕時計を発表しました。
この機能は、時刻を鐘の音で報せる複雑な機構の一つとされ、高い技術力の証です。
1972年には、オーデマ・ピゲのアイコニックなモデル、ロイヤルオークがデビューしました。
このモデルは、ラグジュアリー・スポーツウォッチとしてその後の時計業界に多大な影響を与えました。
初期の段階では批判も多かったものの、その斬新なデザインと品質は時間を経て高く評価されるようになりました。
ロイヤルオークの特徴である重厚感のあるデザインと防水性、耐久性は、今日でも多くの時計愛好家から支持されており、ブランドの主要な売上を占めるほどです。
また、オーデマ・ピゲは家族経営を続けながらも、デザインや素材選びにおいて多様性を保ち、さまざまなバリエーションのロイヤルオークを提供しています。
エレガントでありながらスポーティーなそのデザインは、時を経ても変わらぬ魅力を放ち、長く愛用できることから、多くの時計ファンにとって価値ある選択とされています。
世界初のミニッツリピーター搭載腕時計の誕生
19世紀末、懐中時計がまだ一般的だった時代に、オーデマ・ピゲは画期的な進歩を遂げました。
1892年には、世界で初めてミニッツリピーター機能を備えた腕時計を開発し、その技術革新は時計業界に新たな風を吹き込みました。
このミニッツリピーター搭載腕時計は、時を報じる機能を備え、その魅力的な技術はすぐに注目を集めました。
特に、オーデマ・ピゲは1907年にアメリカの富豪ジョン・シェーファーから特別な注文を受け、彼のためだけにカスタマイズされたモデルを製作しました。
この時計は、文字盤の数字をジョン・シェーファーの名前である「JOHN SHAEFFER」に置き換え、高級感あふれる金とプラチナのコンビネーションケースに、精緻なミニッツリピーター機構を収めていました。
この特注品は、その後のオーデマ・ピゲの時計製作に大きな影響を与え、ブランドの名声をさらに高めることに貢献しました。
ミニッツリピーター機能の搭載は、腕時計の可能性を広げ、細部への注意と革新的なデザインが融合したオーデマ・ピゲの精神を象徴しています。
世界一薄い懐中時計とその後
オーデマとピゲが時計製作の前線を退いた後、彼らの息子たち、ポール=ルイ・オーデマとポール=エドワール・ピゲが家業を継ぎました。
1921年、彼らはその時代のトレンドに合わせ、世界で最も薄い懐中時計を開発し、その革新性で国際的な注目を浴びました。
この時計の厚さはわずか1.32mmに達していました。
しかし、彼らの挑戦はそこで止まりませんでした。1938年には、腕時計に搭載するための手巻き式ムーブメントをさらに薄くする技術革新を達成し、その厚さを1.64mmまで縮小しました。
これにより、よりスリムでエレガントなデザインの腕時計が可能になりました。
さらに、1950年には、彼らは時計業界で非常に高度な技術を要する超小型のコンプリケーション機構を開発することに成功しました。
この複雑機構は、時計の機能性と美学を一層高めるものであり、オーデマ・ピゲの技術力の深さと革新性を世界に示す結果となりました。
『ロイヤルオーク』誕生
1972年、オーデマ・ピゲは時計業界における新たなマイルストーンとなる『ロイヤルオーク』を発表しました。
この時期は、いわゆるクォーツショックが業界全体を揺るがしており、従来の高価な機械式ドレスウォッチの市場が縮小していました。
クォーツ技術による安価で精密な時計の登場により、多くの伝統的な時計ブランドが厳しい状況に追い込まれていました。
この困難な時代に、オーデマ・ピゲは市場のニーズに応えるため、斬新なアプローチを試みました。
『ロイヤルオーク』は、当時の慣習を破る大胆なデザインで登場し、特にその素材選びとサイズが革新的でした。
通常、高級時計に用いられる金やプラチナとは異なり、ステンレススチールを使用し、39mmという大きめのケースサイズで市場に打ち出されました。
これは当時の時計業界の標準としては非常に珍しい試みでした。
『ロイヤルオーク』のデザインは、保守的な時計業界において一線を画し、その斬新さが従来の時計愛好家だけでなく、新たな顧客層をも引きつけることに成功しました。
このモデルのヒットにより、オーデマ・ピゲはクォーツショックによる危機を乗り越え、以降の「デカ厚ブーム」を牽引することとなりました。
この成功は、ブランドが伝統を重んじながらも革新的なデザインを追求する姿勢の象徴となり、オーデマ・ピゲの名を世界に広める重要な役割を果たしました。
代表的なオーデマ ピゲ ロイヤルオークのモデル
ロイヤルオーク
この時計は1972年にジェラルド・ジェンタ氏によってデザインされ、その独特のスタイルで時計業界に一石を投じました。
ジェンタ氏は「時計界のピカソ」と称されるほどのデザイナーで、彼の手がけた『ロイヤルオーク』は、その当時としては革新的な試みが多数反映されています。
特に、高級時計に主に用いられていた金やプラチナとは異なり、ステンレス素材を採用したことは、業界内で大きな話題となりました。
加えて、39mmのケースサイズはその頃の標準よりも明らかに大きく、「ジャンボ」という愛称で親しまれるようになりました。
『ロイヤルオーク』のデザインは、8角形のベゼルやケースと一体型のブレスレットなど、独特の特徴を持ちます。
この形状は後に多くの時計モデルに影響を与え、今では同様のデザインが多数市場に出回っています。
モデル名の「ロイヤルオーク」は、イギリス海軍のプリンス・コンソート級装甲艦から取られており、舷窓を思わせるベゼルデザインは船のディテールからインスピレーションを得ています。
ロイヤルオーク エクストラシン
オーデマ・ピゲの象徴的なモデルであるロイヤルオークの40周年を記念して製造された「ロイヤルオーク エクストラシン(エクストラフラット)」は、その限定復刻版として非常に高い人気を誇っています。
このモデルは「見つけたら即買い」とも評されるほど、コレクターたちの間でプレミア価値があるとされています。
エクストラシンは初代ロイヤルオークに敬意を表してデザインされた復刻モデルで、6時位置に配置された「AP」のロゴや、繊細なプチタペストリー模様の文字盤に直接印字されたオーデマ・ピゲのロゴが特徴です。
また、39mmのケースサイズは、記念モデルとして適切なサイズ感を提供しています。
ロイヤルオークオフショア
『ロイヤルオーク』の更なる進化形として登場した『ロイヤルオークオフショア』は、そのオリジナルモデルを基に、さらに力強くスポーティーな印象を強調しています。
かつて「ジャンボ」と呼ばれた伝統的な『ロイヤルオーク』よりも一回り大きな42mmケースを採用しており、このサイズ拡大は、現代の時計トレンドにマッチしたデザインとなっています。
現在、『ロイヤルオークオフショア』はクロノグラフ機能を備えたモデル「ロイヤルオークオフショアクロノグラフ」と、ダイビングに特化した設計の「ロイヤルオークオフショアダイバー」の二つのバリエーションで展開されています。
どちらのモデルも、スポーツウォッチとしての実用性を追求しつつ、オーデマ・ピゲの洗練されたデザイン感覚が随所に反映されています。
ロイヤルオーク ジャンボ
ロイヤルオーク ジャンボは、初代ロイヤルオークのデザインを踏襲したモデルで、その後エクストラシンに進化していきました。
この過程でジャンボモデルはプレミアム価値が付加され、現在では非常に価値あるコレクターズアイテムとなっています。
デザイン面では、ジャンボは極めてシンプルで洗練された外観を持っています。
複雑なカラーリングや装飾は排除されており、そのシンプルさがかえってオーデマ・ピゲのロイヤルオークシリーズの本質を際立たせています。
このモデルは、洗練されたデザインを求める愛好家に特に推奨される選択です。
また、ジャンボモデルにはCal.2121ムーブメントが搭載されており、このムーブメントは初代モデルと同様です。
さらに、ケースバックにはシースルー設計が採用されているため、時計の内部機構の精巧な動きを目の当たりにすることができます。
ロイヤルオーク オフショア クロノグラフ
1993年にオーデマ・ピゲのラインナップに加わったロイヤルオーク オフショア クロノグラフは、才能溢れるデザイナー、エマニュエル・ギュエによって手掛けられました。
ギュエはロレックス・チェリーニや再興されたアイクポッドなど、その斬新なデザインで知られています。
ロイヤルオーク オフショアは、従来のロイヤルオークとは一線を画す厚みのあるケースや、目を引くメガタペストリー装飾、カラフルな文字盤が特徴です。
このコレクションは、さまざまな素材のストラップを採用しており、レザーやラバーなどが選べるため、より個性的なスタイリングが楽しめます。
まとめ
オーデマ・ピゲの魅力は、世界をリードする高度な技術と革新的なデザインにあります。
創業以来、常に時計業界の常識を覆すような斬新なアプローチを追求し、時計史に数々のマイルストーンを刻みました。
その中でも特筆すべきは、世界初のミニッツリピーター搭載腕時計や、業界最薄の懐中時計など、技術革新の先駆的な取り組みです。
1972年にデビューしたロイヤルオークは、ラグジュアリーとスポーツを融合させた斬新なデザインで時計業界に衝撃を与え、以降のモデルにもその影響を与え続けています。
その魅力は、洗練されたデザインと高品質な素材、そして常に進化し続ける技術力にあります。
オーデマ・ピゲのロイヤルオークは、その卓越した品質と革新的なデザインが魅力の核となっています。
時計愛好家にとって、これは単なる時計以上の価値を持つ逸品であり、賢明な選択としてその名を刻むことができるでしょう。